「自分の最も深い恐れ」について、自分で考えてみました。 私見です。
出発点は、ベッセル・ヴァン・ディア・コーク先生の「身体はトラウマを記録するです。 その他に、いろいろと関連する本を読みました。
更に私が携わった、メンタル関連の患者さんとの日々の施術の中で感じとったことや、それから考えたことです。
それだけでは十分でないので、いろいろなメンタル疾患の患者の会にもオブザーバーとして参加させて頂きました。 例えば、統合失調症を含む様々なメンタル疾患の方が参加する当事者の会であったり、摂食障害の会であったり、幼年期にトラウマを被った PTSD の方の会です。
ある当事者の会では、具体的に「自分の最も深い恐れ」について参加者の考えを聞く機会を得ました。
「自分の最も深い恐れ」とは、「潜在意識の記憶から予測される、拒絶の未来」です。
先に書いたように、ある当事者の会で、「自分の最も深い恐れは、具体的に身体のどこに感じますか?」と質問しました。
私は本、「身体はトラウマを記録する」で学んだ答えを期待しておりました。 それは、身体に刻まれた痛み、筋肉のコリ、しびれなどの身体症状です。
共通の身体症状を見つけることができれば、「自分の最も深い恐れ」に対する鍼灸のアプローチは、いたってシンプルになります。 メンタルの心の問題が、身体の痛み、コリ、しびれの問題になります。 見えない心でなく、具体的な痛み、コリ、しびれになります。 それをはりとおきゅうで解消するだけです。
現に私が関わったうつ病の患者さんでは、そのようなアプローチで上手くいっております。
上の質問に先立って、「自分の最も深い恐れ」の表現に手助けになればと思い、最初に東洋哲学の陰陽論と太極図を当事者の方々に説明しました。
白い部分が陽でプラスです。 黒い陰の部分が、マイナスである己の闇の部分です。
陰の中の陽があり、陽の中にも陰がある、陰陽の2つ合わさって自己が出来ている。
それで「陰の存在を否定すると自分がなくなる」などを説明しました。
賛同者が多かったです。
私の解釈は、灰色で見るので、傷つくこともないですが、喜びも悲しみもありません。 灰色の世界を、無意識でなく、意識的に作りだしているところもあります。そこに、問題の深刻さ感じます。 逆に言えば、意識的に変えることのできる余地があります。
こちらも賛同者が多かったです。
今回の結論を導きだす上で、重要な発言でした。 その一文の意味は聞いただけでは分かりませんでした。 もう少し深く意味を聞いてみると、数メートル先に時間的な未来を感じて、そこで失敗する自分を想像すると言われました。
その場では、その説明の深い意味は分かりませんでした。
その数日後に、漸くその意味が分かりました。
それは、未来を推測しています。 何を使ってかといえば、それは過去の記憶です。 嫌な記憶です。 脳内のどこに、記憶されているかといえば、海馬だけでなく、情動記憶と密接に関係して、脳内に断片化して記憶されているものです。 トラウマの記憶と同じように、右脳を中心として脳全体に断片化させて記憶されています。
潜在識下の記憶です。 その潜在意識の記憶が、何かを見た瞬間や目と目があった瞬間に、フラッシュバックして、未来を類推します。
時間がなく、深堀りの質問もできず、意味は分からずじまいでした。
でも今は分かります。 背中に張り付いているのは、過去の、消し去りたい嫌な記憶です。 恐らく強いトラウマの記憶です。
何度もそれを主張された個性的な方がいました。
発想はユニークです。 しかし私の質問との関連性や、言葉の背後に何があるか、理解不能でした。
「1番の灰色の世界」のコメントに賛同している訳でもなく、私の理解不能なことを訴えられていることが気になり、8月下旬以来、ずっと考え続けております。
昨日、すこし解釈の糸口が僅かに見えて来ました。 意味の解釈ができれば、別の機会の紹介できればと思います。
最初に結論で示しましたように、「自分の最も深い恐れ」とは、「潜在意識の記憶から予測される、拒絶の未来」です。 その解説です。
人と繋ながろうとする強い欲求を、患者の会の参加者に強く感じます。
支援者の視点で参加すると、何かが通じなく、モヤモヤした違和感を感じることがありました。 今はその理由が、分かりました。
病気を治そうというよりも、同じ病気の人と繋がりたいという欲求です。
生物的欲求です。 社会的動物である人の欲求です。
生物学者のリン・マーギュリス先生「共生生命体の30億年」にありますように、進化の過程で細胞レベルの共生から生まれている本質的な欲求です。 我々の生存に関わる欲求と感じています。
繋がることへの否定や拒絶は、最大の恐れをなります。
希望がないと生きていけません。 希望とは未来のことです。
我々は、動物的な本能に支配される脳を持つと同時に、未来を予測する大脳を持つ存在でもあります。
その為に、感覚で得られた情報を脳の分析を使って、常に未来を予測しようとします。 最短時間で、ショートカットの効率的な予測は、脳内の記憶を頼りの類推になります。
残念ながら、悪い類推となり、それが恐れを生み出します。
PTSDのトラウマの記憶と同じです。 情動を伴う記憶は強化されやすく、脳内に広く断片化した記憶となっています。
未来の類推をする記憶となります。
潜在意識とはいったい何と、ネットで検索します。 すると出るのは、「宇宙と繋がる」とか「成功を引き寄せる」とか、それに関連することばかりです。 または、難しい観念的な定義であったりします。 その本質が、よくわかりません。
ここでは、「潜在意識」は、脳に広く散らばって断片化された記憶と、その記憶を使い、自動的に未来予測をする仕組みと考えています。 その仕組みには、外部からの感覚入力も必要です。
「拒絶の未来」が類推され、繋がりが拒絶されたり、絶望が生まれると、唯一残された最終手段は、生物レベルの自分自身を守る行動です。 シャットダウンして、生命維持を最優先します。 一般的な様々なメンタル症状が生じます。
自分の中では、「自分の最も深い恐れ」の本質的なことが、分かったのではと思っています。
このような恐れが「脅迫観念」を生み出してます。 それと単にストレスという言葉でまとめて表現されているメンタル疾患があります。 その本質的な恐怖の根源を説明できたのではと思います。
分析、解析できれば、おのずとその対応法はわかります。
例えば、意識的に作りだしている部分もある「灰色の世界」があります。 その改善は、言葉によるセラピー的な動機付けなども有効であるとわかります。
PTSDのような強烈なトラウマ体験がなくても、ストレスの蓄積が、それに近い断片化した記憶を作りだし、その自動応答が、負の予測を作りだすことも分かりました。
そうなると、鍼灸の取り組みが、PTSDと同様に有効であることも分かります。
鍼灸の有効性は、NYの世界貿易センタビルに対するテロでの患者の救済で、なんと西洋医学を抑えて、トークセラピーも抑えて、一番支持されました。
詳しくは記事ページの「ニューヨークの世界貿易センターでのトラウマと「はり」」でどうぞ。
今回は、「自分の最も深い恐れ」と身体症状の関連性は、確認できませんでした。
言葉のやり取りだけでしたので、本当にそうなのか、どうかも分かりません。
やはり、どこかに身体症状がでているはずと考えております。
今後、調査を続けたと思います。
(2018/11/10)